わが子の進路の選び方【親子の学びガイド】

約10年前、私の塾での出来事です。
通知表の合計が20弱ほどの中3女子生徒が通ってくれていました。

秋ごろになり、中学校の進路指導で「高校は難しいから専門学校に進学を」と言われたと保護者から聞きました。

ご家族が飲食店を営んでらっしゃったことを踏まえてか、調理の専門学校を勧められたようでした。

しかし、保護者は高校進学を希望していたので私は憤慨しました。
「今の通知表でも高校は行けるぞ?何?中学の先生は専門学校の癒着しているの?」

正義の味方になったような心持ちで、私はその保護者に話しました。
「大丈夫です。今の成績で高校には行けます。学校の先生にしっかりと主張してみてください」

中学の先生の進路指導に逆らう内容です。
さあ、ここからどうなっていったのか?ここからの彼女の進路と、10年経って今私が感じる感想はこちらから↓

幸せを願って選んだ進路はどうだったか?

中学校の先生から専門学校への進学を勧められた保護者は、私の助言も受けて学校の先生に高校進学希望を再度伝え直しました。
中学校の先生は「それならば」と保護者の意見を受け入れて、私立高校に推薦で入学することに変更。
無事に高校に入学をしていきました。

「せめて高校は出ておいて欲しい」なんてセリフは日本全国の保護者が口にするセリフです。

学歴社会の中で生きてきて、学歴による社会の風当たりの違いを目の当たりにしてきた方なんかは、このセリフに力が入ります。

今回のこの生徒の保護者もこのセリフをおっしゃっていました。
私もその保護者の気持ちがよくわかったので、全力で高校入学へ力添えをしたということです。

さて、無事に高校入学が出来たところでめでたしめでたしとなるところですが、数年後にふとその子のその後についての噂を他の子から聞きました。

「勉強が大変でシンドイ想いをしているらしい」

多少想像が出来た展開ながら、人の噂でこの言葉が出るというのは、もしかして相当シンドイ想いをしているのかもしれない。

一生懸命取り組める子ではありましたが、確かに勉強は得意な子ではありませんでした。
「高卒」が彼女の幸せに繋がるだろうと勧めた保護者と私ですが、高校でどれぐらいシンドイ想いをしたのでしょうか。ずっと気がかりでした。

そこからまた数年後、高校を卒業したその子にご家族の飲食店で働いているところで再会をしました。

明るく元気に働く彼女を見て、彼女の性格にビタッと合った素敵な仕事だなと感じてですね、そこから私は中学生当時の彼女の進路指導のことを思い出しました。

「あぁ、あの時私は高卒を目指すことを盲信したけれど、保護者の希望を叶える正義の味方気どりだったけど、もしかしたら違ったかもしれないなぁ」

「もしかしたら学校の先生が指導をしてくれた進路は、彼女の勉強の出来や性格を総合的に考えて、彼女の幸せを一番願った最善の進路指導だったのかもしれない」

「高卒を目指すより、社会に出るときに家族を手伝い飲食店で働く可能性を視野に入れ、そんな彼女が調理のスキルを身につけることは必ずやプラスに働くだろうという親心だったのかもしれない」

活き活きと働く彼女を目の当たりにしていたので結果としてよかったですが、私はそんな風に当時の進路指導を振り返りました。

また彼女に再会したときには、このへん実際どう感じているかを聞いてみたいですね。

わが子のために今の日本を見つめて欲しい!

さて、今回のこのエピソードで私が何をお伝えしたいのかというとですね、
「私たち保護者世代の常識を今の子供たちに当てはめると上手くいかないことがある!」
「だから今の日本の状況をしっかりと見つめ、子供の幸せを願い、進路はよく相談して欲しい!」
なんてことですね。
ちょっと話はズレてますが私個人の反省が反映されてます(笑)

終身雇用も年功序列も終わりました。
少子化で定員割を起こす公立高校が増えてます。
通信制高校が毎年生徒を増やします。
少子化を補うべく外国人労働者が増えてます。
AIの進化で近年無くなる職業がたくさんあると言われます。

私たち保護者世代が学生の頃にはどれも想像出来ませんでしたよね。
私たち世代の常識は子供世代の非常識であることがあまりに多いです。

しっかりと今の日本を知ったうえで、子供の進路を相談してあげてほしいです。

どうか私の反省を利用してください(笑)

文:國立拓治(Takuji Kunitate)
愛知県と兵庫県にて学習塾を経営。
著書は「くにたて式中学勉強法」(大和出版)ほか。

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