日常生活に考えを広げ、思考力・判断力・表現力を育てる『学び』へ。
令和3年度からの「学習指導要領」改訂の目的は、未来の社会を生きていく子どもたちに必要な「考え方や文化の異なる人々ともコミュニケーションをはかることができる力」や「正解がない課題の答えを見つける力」を身につけさせること。
これらの力を育むために、子どもたちの思考力・判断力・表現力の育成や主体的な学びが強調されています。
「桜の開花日はいつ頃になるのか。」「今月の水道料金はいくらになるのか」
これらの問題は、中学2年で学ぶ【一次関数】を用いて考えることができます。
学習した内容(知識)を活かして日常の生活に考えを広げていく問題、つまり、理由や方法を説明する問題、文章とデータから情報を読み取る問題が新しい『数学』の教科書では数多く扱われます。
これらの問題は、思考力・判断力・表現力を高めることを目的にしています。
このあと「数学の新しい教科書」が目指す「ゴール」について説明をしていきます。
これからの「数学」は、知識を土台とした”読解力”。
【資料や問題文の情報から「推測」し「考察」する力が求められます。】
「100m走について、タイムが最小となるストライド、ピッチを求める問題」、「都道府県別の就業者数割合のデータに関する問題」これは、先日行われた『大学入試 共通テスト』数学の問題の一部です。共通テストは「知識・技能」と同様に「思考力・判断力・表現力」をバランスよく評価できることを目的に作られています。
つまり、今回の学習指導要領の改訂、新しい教科書が求める「学びで身につけた視点や対処法をこれからの学習や生活に生かしていくことができる指導」を進めるという点で合致しています。
教科書に載っていない資料や実験を、その資料や問題文の情報から、すでに学んだ知識をもとに推測、考察し、答えにたどり着く力を求められています。
数学における学習内容の移行や追加の単元は以下のものです。
● 「資料の活用」が「データの活用」に名称の変更
● 中学1年「素数」、「自然数を素数の積として表す」
● 中学1年「累積度数」追加
● 中学2年「反例」「四分位範囲と箱ひげ図」追加(高校内容から移行)
大きな変化があるのは「データの活用」の内容です。2020年度から小学校では最頻値や中央値などの代表値が扱われており、中学数学にはこれまで高校で扱われていた内容がおりてきます。
単に計算や証明といった数学的な考え方、「数学の事象」ができるようになるだけではなく、「日常の生活や社会の事象」を数学的に捉え、論理的、総合的・発展的に考える資質・能力を育む工夫がされています。
また他教科に関連する内容も数学の教科書の中に積極的に取り入れられています。
社会 「時差の計算」「選挙結果の予測」
理科 「地震のゆれのしくみ」「食塩水の濃度」「木星の直径」
英語 「速さの単位」 など
日頃、学校で学んでいる内容がどのようなことと関連しているのか意識して勉強を進めていくことも大切です。
保護者は、新しい「学び」にどう向き合えばいいのか?
【学習状況の把握と情報の収集、少し先を見据えた親子のコミュニケーションを。】
今回の教科書改訂で最も大きな影響を受けるのは「新中学3年」(現在の中学2年)です。
この学年は、中3段階で新しい教科書による授業を1年間受けただけで新学習指導要領に則った高校入試をむかえます。
しかもこの学年は、大学入試 共通テスト本格実施の最初の学年にあたります。
高校1年からは年度ごとに激変する高校教科書を3年間使用。
共通テストも新たな科目編成に変わります。
新中学1年は、新しい教科書を年度ごとに3年間使用するため、高校入試が大きく変化する可能性があります。
とくに英語は、これまでの教科書と異なり大幅に難化するため、入試問題の難化は避けられないと思います。
子どもの学習状況をしっかり見守り、模試や塾などを上手く活用し情報を収集すること。
そして、これからは今の成績に一喜一憂するのではなく、子どもの将来、少し先を見据えた親子のコミュニケーションが大切になってきます。